リレーコラム #10 こどもがまちで働くワケ

ICT教育で目指しているのは,学校を出ても実生活の中で学び続けることのできる力です。かつての教育スタイルでは,誰かに教えてもらわないと勉強が出来ない人が出てきます。


_聖徳学園中学・高等学校 学校改革本部長 品田 健


リレーコラム10回目は品田健さんです。

8回目のコラムで公立小学校の図工専科教諭山内佑輔さんに小学生の「子ども×創造×ICT」について伺いました。次は中高事情も知りたいとICT教育の先駆者である品田先生にお話を伺いました。




Q1 現在のお仕事や活動の内容を教えてください。


武蔵野市にある聖徳学園中学・高等学校の教員です。

いわゆる「情報」の授業を担当していますが,本校では,STEAM教育(Science,Technology,Engineering,Art,Mathematics)の推進をしており,情報の授業をコアにしたSTEAM教育の開発をメインの仕事としています。

今までは情報の授業と言うと,ワープロや表計算といったアプリケーションの使い方を学ぶことが中心でしたが,使い方の習得を目的とするのではなく,課題解決に取り組む中で使い方を自然に学んでいくようなスタイルに転換できないかと取り組んでいます。

例えば,決められた同じ文書をみんなが作るのではなく,あるテーマについてグループで討論しながら文書を共同編集し,最終的にグループの意見を一つの文書として発表するような課題に取り組んでもらっています。アプリケーションの使い方はほんの少ししか説明しませんし,タイピングの練習も一切しません。それでも生徒は「伝えたい」何かがあれば,なんとかタイピング出来るようになろうとしますし,アプリケーションの使い方もヘルプを見たり,友達に聞いたりして自力で学んでいきます。一旦スイッチが入ってしまえば、ほとんど私は教えることがありません。



難しいのはいかに生徒が「取り組みたい」と思う課題を設定するかです。

前述した文書編集の際は,映画の「オデッセイ」を題材としました。宇宙飛行士が火星に取り残されてしまう映画です。グループでそれぞれ取り残された宇宙飛行士役,仲間の宇宙飛行士役,NASAの長官役と配役を与え,限られた条件(酸素があと何日持つとか食料が何日分しかないとか)において,果たして救出に向かうのかどうかを検討してもらいました。

その過程で生徒は仲間を説得する材料として様々な情報を調べます。そこでScienceやtechnologyに自ずと繋がっていくのです。私や他の教員が教えなくても自分が関心を持って調べていきます。

いかに他人に自分の考えを納得してもらうか,その伝え方を考えることがデザインにも繋がります。これはArtに関係してきます。

最終的に「正解」はありません。それぞれのグループでの結論は異なります。映画のストーリーが正解という訳でもありません。一つの答えにたどり着くことが大事なのではなく,答えにたどり着くまでの過程が生徒の学びになると考えています。



Q2 貴校では「考える力」を大事にされているということで、実際の授業の様子も生徒自ら考え、アウトプットしている姿が見られました。この授業のスタイルはいつどのようなきっかけから生まれたのでしょうか?


聖徳学園としては元々アクティブラーニングの推進に取り組んできました。私が聖徳学園に来た時には既にこのようなスタイルの授業が各教科に取り入れられていました。

私自身は元々は大学受験に向けて講義形式で一方的に話し続けるような授業スタイルでした。自分自身がそのような授業を受けて大学にも受かったし,実際に自分が教えるようになっても そのような授業で大学に合格する生徒もいたので,何も疑問を持ちませんでした。

しかし30代で管理職になり,改めて様々な授業を見ていく中で自分の授業スタイルを見直すようになりました。大きなきっかけはやはりiPadの登場です。

実際に自分で購入して触った時に「これを学校で使えるようになったら可能性がとても広がる」と感じました。導入までに2年程かかりましたが,生徒の創造力に火をつけるツールとして活用しています。



Q3 2020年から義務教育でもプログラミングがスタートします。保護者も教員も変化の波についていくのに必死に見えます。すでに品田さんは長くICT教育に取り組まれていますが、ICT教育で培うべき力とは何でしょうか?


確かに必死です。。。ただ,私自身は全てを理解していなくても良いと思っています。ネットで様々な情報を手に入れることができるので,教員は「こういうものがある」「こんなことができる」というきっかけを与えることが出来ればいいのではないかと考えています。

今までは先生が何でも知っていて,その知識や技能を生徒に授けるというのが教育でしたが,これからはそうではないはずです。興味を持った生徒は強制されなくても自分で調べ習熟するでしょうし,詳しくなった生徒が他の生徒に教えられるようになれば更にいいと思います。

ICT教育で目指しているのは,学校を出ても実生活の中で学び続けることのできる力です。かつての教育スタイルでは,誰かに教えてもらわないと勉強が出来ない人が出てきます。

社会に出れば誰かが先生のように教えてくれるとは限りません。自分に必要なことは自分で学ばないといけないのです。その時に活用できるのがICTであり、それぞれのニーズやレベルに対応して学習を進められるのがICTの利点です。

例えば,外国語を勉強したいと思ったら,以前は語学学校に通ったり,テキストを購入したり,ラジオの講座を聞いたりして勉強したと思います。もちろん留学という手段もあったでしょう。しかし今やICTの発達で,テキストはネット上に色々とありますし,動画で学ぶことも出来ます。発音を自動的に認識して正誤を教えてくれるアプリケーションやサービスもあります。人間の先生には物理的な限界がありますが,ICTであれば何度でも正確な発音を聞かせてくれ,何度でも発音練習に付き合ってくれます。留学しなくてもネットを通じて学びたい言語を話す人との交流も可能です。

問題はそのような手段を知っているか,です。そこを中高の間に経験してもらいたいと思ってアプローチしています。授業の中でこのようなアプリケーションやサービスを使った学び方を知ってもらい,将来勉強が必要になった時に活用してもらえたらと考えています。



Q4 こどもDIY部は学校外で小学生をメインに活動していますが、小学生のうちにやっておいてほしいなと思うことはありますか?


リアルな場だからこそ出来ることを小学生のうちは特にやっておいてほしいですね。

これからは知識だけ頭に入れていくのであれば,かなりの部分がICTを使うことで可能になってきます。しかしリアルにみんなが集まらないと体験できないことがあります。チャットやSNSでは出来ない話,バーチャルのゲームでは出来ない遊びをたくさんして欲しいです。




Q5 最後にクラウドファンディング中の「こどもスタートアップ塾」へ応援メッセージをお願いします!

こどもがリアルな世界で何かを体験することは特に年齢が低いほど非常に価値があると思います。バーチャルの世界も便利ではありますが,こどもの時期だからこそ,実際に自分が頭を使って手を動かし,直接話をして活動するリアルな経験を大事にしたいものです。

なぜならふとした興味を形にしようと時に一緒に楽しんでくれる仲間の存在に背中を押されたり、すごいねと尊敬のまなざしを向けてくれる仲間の存在に勇気づけられ、自発的に動くことができるからです。「こどもスタートアップ塾」は、プロジェクト形式でこどものやってみたい!を刺激し、安心してトライ&エラーできる場を用意してくれているので、貴重な体験ができるのではないかと思います。




中高生ともなると大人の世界と変わりませんね!

”アクティブラーニング”、”STEAM教育”、”ICT教育”ってよく聞くけど難しそう、という方にもどんなことをやっているのかイメージしていただけたかと思います。

こうことを言うと怒られるかもしれませんが、アクティブラーニングやSTEAMって、実は年齢が低い子は遊びの中で自然にやっているんですよね。品田先生も山内先生も、小学生のうちにリアルな場での遊びをたくさんやってほしいと思うのはそのせいでしょうか。

だからこそこどもDIY部でも、君たちそのまんま大きくなったらいいんだよ!ということをこども達に伝えたいんです。

どうか「こどもスタートアップ塾」をスタートラインに導いてください!お願いします!



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